経営者の皆様に知っておいていただきたい知識ということでお話しますと、御社に事業承継(M&Aや事業譲渡、相続など)に詳しい顧問弁護士がついていれば、法的な知識(こういうことをすべきとか、これをしたら法律違反や契約違反になる)は、その弁護士に任せることが可能です。
皆様に知っておいていただきたいのは、事業承継にあたって準備すべきことや心構えという部分になります。
まず、皆様が事業を渡す側にあるとします。いわゆる事業の売主的な立場です。
そして、事業承継の相手は、買主的な立場にあります。
事業を承継するに際しては、売主の立場にある方がまずいろいろな資料を集め、誠実にそれを買主に開示することが重要です。
たとえば取引先にはどういったところがあって、その契約関係や未払い等精算が済んでいるかどうか、顧客の情報、従業員の情報など、譲渡する事業に関わる債権、債務に関する情報を幅広く収集することが重要です。
そうでないと、譲渡後に、簿外債務が判明したりして、事業譲渡契約違反になったり、損害賠償請求されたりするリスクが発生します。また、仮にそこまでいかなくても、完全に買主との信頼関係が壊れてしまう可能性もあります。
したがって、まず、譲渡に関する資料をより多く、正確に、集めることから始めてください。
次に、取引先や従業員に対して、譲渡の方針を伝え、譲渡後も取引を継続してもらうよう、あるいは優秀な従業員には残ってもらうような努力が必要です。
買主は、譲渡後、一から新たに事業を興すような手間は省きたいと考えて事業を譲り受けます。つまり、既存の取引先はそのまま残し、従業員もそのまま残ってほしいと考えて事業を譲り受けることがほとんどだと思います。
したがって、売主の立場にある皆様は、ある程度時間を掛けて、取引先の理解を得るようにし、また、従業員の中でも役員的立場にあったりキーマンと目される立場の方を中心に、そのまま会社に残るよう働きかけることも重要かと思います。
とくに、運送業については、人手不足の問題や運送業の知識に乏しい買主であったりする場合、しばらくは売主となる皆様にも会社に残ってノウハウを伝えてほしいという要請もあり得ます。
その場合、もちろん、買主との個別の契約の問題はありますが、売主の皆様の立場からしても、承継後、ご自身の会社の今後を見守りつつ、距離を離すことができるというメリットもあります。